ミャンマーの雇用情勢をナビゲート

ミャンマーで事業を行うことは、機会があるのと同じくらい多くのリスクを抱えており、ミャンマー国内への進出を切望している企業は、会社設立に伴う独自の規制や手続きに注意する必要がある。
ミャンマーで事業を行う際に投資家が注意を払うべき分野は雇用である。労働組合は権力を保有しており、 労働局は労働者に対してより好意的である傾向が強いからだ。
ヤンゴンで工場を運営する香港のFu Yuen Garment Factoryは11月、会社の規則に違反し生産を遅らせたとし8月に予告なく解雇した30人の組合員の再雇用を余儀なくされた。
Fu Yuen Garment Factoryは、工場における1400人のうち300人の労働者による72日間のストを受け、ヤンゴン首長のPhyo Min Thein氏が介入した後、労働者を再雇用することに合意した。 10月には、マハバンドゥーラ公園で地方自治体に紛争解決を要請する行進も行われた。
そのため、投資家は、円滑な事業運営を確保するためにミャンマーで労働者を雇用することの規則と要件に注意する必要がある。
ミャンマータイムズは、国内の雇用情勢についての見通しを得るために、Rajah&Tann NK Legal Myanmar Company Ltdのパートナー兼外国人弁護士であるLester Chua氏に話を聞いた。

使用者はどのように非生産的な労働者を解雇するのか? 法律に基づき非生産的な労働者に対処するための手順はどのようなものか。
非生産的な労働者を解雇するには、一般的に3つの方法がある。
第一に、最低1ヶ月の通知期間が与えられ所定の退職金が労働者に支払われるという条件で、使用者は雇用の終了通知を出すことによって労働者を解雇することができる。
第二に、使用者がミャンマー人労働者と締結することを義務付けられているモデル雇用契約書は使用者と労働者が懲戒処分を取ることを正当化するであろう二つの違反、つまり重大な違反及び通常または一般的な違反の提示を認めている。
使用者は、解雇手当金を支払うことなく、雇用契約に定められた重大な違反を犯した場合に労働者を解雇することができる。
使用者は、そのような状況での雇用の終了が明確な理由で確実に文書化されるように注意するべきである。また、可能であれば、重大な違反の取り扱いについて、労働者の書面による承認を得ておくべきである。
また、理想的には、雇用契約が登録された区の労働事務所において関連する事件担当官と協議した上で、あらゆる解雇が進められるべきである。
労働者が通常の罪を犯した場合、使用者は違反した労働者に警告を3回与えた後、解雇手当金を支払うことなく雇用契約を解約することができる。最初の警告は口頭による警告である。また、口頭による警告を行ったとういうことを証明する適切な記録を残すべきである。
2回目の違反では、労働者は書面による警告を受けなければならない。3回目の違反では、労働者は署名された書面により違反を繰り返さないことを誓約しなければならず、それ以上の違反は認められない。
違反を行った労働者が書面により違反を行わないと誓約した後、12ヶ月以内に更なる違反を犯した場合、使用者は退職金を支払うことなく労働者の契約を解約することができる。
ただし、労働者が通常の違反から12か月以内または書面により違反をしないこと約束してから12か月以内に別の違反を犯さなかった場合、使用者は労働者が犯した過去の違反をすべて破棄する。

全ての使用者が労働者に与えるべき基本的な義務的権利及び利益は何であるか。
労働者の基本的な権利と利点には、次のものが含まれる、
(1)社会保障法2012に基づく社会保障の登録
(2)連続した12か月間、勤労を続けた場合に最低10日間の有給休暇を取得する権利、及び、毎年6日間の臨時休暇を取得する権利
(3)正社員の場合、月払いにより給与を受ける権利がある。 会社の労働者が100人以下の場合、給与は支払期間の終わりに支払われなければならない。 会社の労働者が100人以上の場合、給与は支払期間の終了後5日以内に支払われなければならない。
(4)少なくとも1日当たり4,800チャットの最低賃金を受け取る権利
(5)工場の場合は5時間の連続作業毎に少なくとも30分の休憩、店や事業所の場合は4時間の連続作業毎に30分の休憩を取る権利がある。
(6)工場の場合、1日8時間又は週44時間を超えた作業について、店舗または事業所の場合、週48時間を超えた作業に対して残業代を受け取る権利

ミャンマーでは労働組合は合法であるか、それらはどのくらい強力であるか。労働者がストライキをしているような状況に対し、使用者はどのような方法で合法的に対応すべきか。
労働組合は、労働組合法2011(LOL)及び労働紛争解決法2014(SLDL)によって規制されている。 法的枠組みは、ストライキを組織する権利を含め、労働組織に多くの権限を与えている。
労働者がストライキを行おうとしている状況を取り扱う際に、使用者が注意を払うべき実務的留意点がいくつかある。 使用者は、ストライキが行われる可能性のある法的制限を確実に知っておくべきである。
LOLの下でストライキを違法とする特定の状況がある。 例えば、ストライキによる事業活動の中断が、多くの人々の生命、健康または安全を危険にさらす可能性がある場合、また、関連する労働団体の許可なくストライキが行われた場合、及び労働団体がストライキを行う際に必要な事前通知を提供しなかった場合である。
LOL第39条に基づき、ストライキを実施しようとする労働組織は、まず当該使用者及び関連する調停機関に通知し、ストライキの日の少なくとも3日前に、ストライキの日付、場所、参加人数、ストライキの方法と時間を記載し、関連する労働団体から許可を得なければならない。
ストライキは、賃金、労働者の給与、福利厚生、労働時間など、労働問題や労働者の職業上の利益に関係しない場合にも違法である。
使用者はストライキが合法的に組織される前に遵守される必要がある手順を知るべきである。 この手順はSLDLの下で説明されている。 簡潔にいうと、紛争は、関係当事者が相互に合意した和解に達することができるかどうかを確かめるために、まず関係調停機関に具申されなければならない。
3営業日以内に相互の合意に達することができない場合、紛争に関する決定については、関連する仲裁機関に照会されなければならない。労働者が、当該決定に満足しない場合、関連する仲裁機関が当該決定を下した後に限りストライキの実行が許可される。
ストライキは、関連する労働連盟の承認を得てのみ実行できるため、使用者は、ストライキの実施に関して合理的な制限を設けるよう当局と協力することができる。よって、事業への混乱を最小限に抑え、使用者の中核的な事業機能がストライキの間も継続できる。

使用者はストライキを行った労働者を解雇する権利があるか、手続きはあるか。
使用者は、労働組織への加入またはストライキへの参加に基づいて、労働者を解雇することを禁じられている。 この禁止事項に違反すると、最高10万チャットの罰金または最高1年間の懲役刑が科される。
ただし、ストライキにより雇用契約が一時的に停止されるため、使用者は、労働者がストライキを行っている間は、当該労働者に対して給与や手当の支払いを免除される。
(Myanmar times 2018年12月10日版 第5面より)