ミャンマーの労働法が労働紛争を誘発

ラカイン州出身の工場労働者である Hla Hla Wins氏は、6ヶ月間失業していたにもかかわらず、彼女の家族に資金を送金しなければならなかったため大きな債務を抱えている。
彼女の元雇用主である韓国の靴工場MDMが2018年に閉鎖された後、彼女はヤンゴンの住居から退去させられた。「私はもはや家賃を払う余裕がなかった」と、現在Twante地区で友人と暮らすHla Hla Win氏は述べる。
過去10年間ヤンゴンで働いて暮らしてきたHla Hla Win氏は、2018年7月に充分な保障なしに他の45人の労働者とともに解雇されたと述べた。労働者には8月まで給与が支払われたが、ミャンマーの社会保障法の下で求められている解雇に対する保障はなかった。
さらに、労働者たちは、労働紛争を地元の仲裁評議会に持ち込むことを許可されていないと述べている。「我々の訴訟は雇用主との個人的紛争とされ、民事裁判所に移送された」と彼女は述べた。
労働者がラインタヤー地区裁判所で労働者の権利侵害のためにMDMに対して訴訟を起こした際、裁判官は使用者の起訴に利用可能な法的手段の欠如を理由に保障を求める請求を却下した。

労働権
事実、Hla Hla Win氏のような事件は2018年6月以来増加している。労働・入国管理・人口省は、組合員ではない労働者を含む紛争の解決を仲裁委員会で禁止している。そのような事件は個人的紛争とみなされ、民事裁判所に移送されると同省は述べる。
2018年6月以前は、地区レベルで解決されていない労働紛争は全て、2012年に制定された労働紛争解決法に基づいて州及び国家の仲裁評議会に移送された。仲裁後も未解決である事件のみが裁判所で審理された。2012年労働法の23条に基づき、地区調停機関又は仲裁評議会の決定に不服がある場合、いかなる使用者又は労働者も民事裁判所に訴訟を起こすことができる。
しかし今では、労働紛争に関与している組合員と組合は事件が仲裁評議会によって処理される前に、労働者が組合に加入しているという合法的証拠として、まず省庁から正式な証明書Form 7の発行を受けなければならない。
その結果、一部の使用者はForm 7の受領を待っている労働組合リーダーを解雇していると労働者と労働活動家は述べる。その一方で、組合員が仲裁を受ける資格があるにも関わらず組合がForm7を受領していないこと理由に、一部の地区調停機関は事件を直接民事裁判所に移送している。
別の靴工場であるMyanmar Infochampの組合指導者であるThin Thin Aye氏は、2018年に彼女とその他3人の組合指導者が解雇され、彼らの紛争は仲裁評議会ではなく民事裁判所に移送されたと述べた。労働者がForm7を受け取る前に、紛争手続は開始された。
ヤンゴン地方政府に助けを求めた後、Thin Thin Aye氏は、以前の使用者に対し解雇されたとして訴訟を起こすよう勧められたと述べた。Ma Thin Thin Ayeは自発的に民事訴訟を取り下げる代わりに、ただ再雇用されたいと考えている。しかし、彼女は失業したままである。

さらに予想される紛争
2018年6月の同省の指示では930の組合の約7万人の労働組合をカバーしているに過ぎず、約2200万人の労働者が組合員ではないため、使用者と労働者間の紛争数は今後も増え続けると予想される。元中央仲裁評議会員であり、バゴー地域の議会の労働顧問であるYe Naing Win氏はそう述べる。
2018年6月の同省の指示は「国内の最も脆弱な立場の労働者の保護のための2012年労働法の主要な目的及び2008年憲法の基本原則を破壊している」と彼は見解を述べる。
「労働法によれば、理由なく解雇された労働者は、その会社に勤務した年数に基づいて雇用主から補償を受けなければならない」とYe Naing Win氏は述べる。
補償争議が解決されない場合、労働者は民事裁判所に提訴するよう定められている。しかし、実際には多くの労働者が口頭弁論期日に出席することは不可能に近い」と彼は言った。
ミャンマーのYangon Richang Apparel Co(Nisho)の組合指導者であるKaung Myat Khin氏は「口頭弁論を欠席したため、私の訴訟は却下されたと民事裁判官は言った。実際には、私の職場からの移動時間が原因で、私は約10分遅れたのだ」と述べた。Kaung Myat Khin氏はその後、遅刻のためにその仕事を解雇された。
元MDM労働者のHla Hla Win氏のように、裁判の審理に出席するために仕事をやめる余裕がない、又は仕事から離れることができない人もいる。「口頭弁論に参加するには、交通費としてその都度3000チャットがかかる。それは私一人の一日の生活費と同じ金額である」と彼女は言った。
同様に、Hla Hla Win氏は新たな仕事を確保することができなかった。「私は実際には別の工場に雇用されたが、口頭弁論に出席するために何日も休みを取らなければならなかったため、再び解雇された」と彼女は述べる。
労働者にとってのもう一つの障害は、高価な弁護士費用である。「弁護士を雇うための最低料金は約350万チャットであり、労働者はそれを支払う余裕がない」とKaung Myat Khin氏は言った。その結果、多くの人が口頭弁論にまったく出席しなかったり、不正確又は不完全な訴訟を起こしたりしている。
いずれにせよ、地区の労働局と調停機関は紛争処理が苦手なことで有名であると活動家たち、そして組合指導者たちは述べている。

法制度上の制限
「紛争解決機関は、労働者と雇用主の間の保障訴訟のみを調停する。彼らは労働者の権利侵害を取り扱ったり、再雇用を支援したりしない。労働者が理由なしに解雇された場合には、多くの場合、使用者は法律の下で規定された金額よりも低い補償額を支払う」Action Labor Rights Networkの活動家であるSai Yu Maung氏は述べる。
その点から、使用者は解雇した労働者に保障を行っていないだけでなく、再雇用もしていない」と Sai Yu Maung氏は述べる。
「労働者は大臣の指示に苦悩している。不当に解雇された場合、彼らは再雇用される権利を失ったこととなる。労働者は使用者によって提供される低額の保障でも受け入れざるを得ない」と労働活動家のHla Hla氏は言った。
実効的な解決手段がないため、労働者の不満は長期にわたるストライキを度々もたらし、その結果、使用者と他の労働者の双方にダウンタイムが生じる。わずか2週間前の1月8日、ヤンゴンのCixing Knitting Factoryの7人の労働者が、経営者との調停会議を経て再雇用された。
労働者たちは2018年12月24日に予告なしに解雇されたとされ、2週間のストライキは彼らが再雇用されたときに終了した。1月2日に、Cixingは実際には再雇用を含む17の要求に同意した。しかし、1月7日、非ストライキ労働者が復職に反対したと同社が主張した後、7人の労働者が再び解雇された。
ヤンゴンの他の15の工場から約350人の労働者がストライキに加わった後、7人は調停会議で再々雇用された。
Cixingのストライキは、毎年ヤンゴンで行われている多くのストライキのうちの1つである。2018年10月、ヤンゴンの首長である Phyo Min Thein氏自身が、労働者と中国のFu Yuen Garment Coの経営陣との間の紛争で調停人として調停を行った。それは数ヶ月のストライキの原因となった。
Fu Yuenの経営陣は2018年8月20日、組合員である30人の労働者について、生産を乱し会社の規則に違反したとして予告なしに解雇した。解雇されたことで、工場の約300人の労働者がストライキを行った。

待ち望まれる正義
未解決の紛争を現地の仲裁評議会に譲渡することは2012年労働紛争解決法では許可されていないため、それについて労働省が命令を出したと政府は述べる。労働法によればそのような紛争は民事裁判所に提訴しなければならない。
「これまで、我々は雇用主と従業員の紛争中に仲裁評議会が調停することを許可していた。現在、労働省は2012年の法律を運用しているため、この慣行を継続することができなくなった」と労働省の事務局長であるMyo Aung氏は述べた。
しかしながら、ミャンマーの議会は労働法の下で紛争の定義を刷新し、労働者が労働紛争において法的手段を求められる余地を与える可能性を見出すために議論している
しかし、法律が改正されるまでは、費用を意識した使用者と工場労働者間の紛争が定期的に発生すると予想され、多くは未解決のままでになる可能性がある。
Hla Hla Win氏は、工場労働者、所有者、及び地方自治体間の会合時にPhyo Min Thein氏へ彼女の窮状を報告する機会があった。しかし、首長が労働者の保障のために工場を売却するようMDMに命令したとしたが、同社は依然として従っていない。
(Myanmar Times 2019年1月22日版 第2面より)