ミャンマーは、次々と法律を制定しており、これが外国投資家の安心感につながると期待されている。だが法律の制定は、施行に必要な専門知識や機関の構築とは異なり、法律関係者は外国投資に対し安定した環境を提供できるよう努力する必要があると専門家は指摘する。
国は昨今、1月に制定された新仲裁法を含め、現代的な法的構築の要となる法律を制定している。同法は半世紀以上前の法律を改正するものであり、ミャンマーの裁判所に外国で決定された仲裁判断を執行するための法的根拠を提供する。
「外国人投資家が関与する商業契約のほとんどは紛争が生じた場合に仲裁による解決を規定する」と国際仲裁クラブミャンマーの代表Ainzail Kyaw Soe氏は述べた。また、契約書には、仲裁の際にどの国の法律を準拠法とするか、どの国で仲裁を行うかが記されるという。
例えば米国の投資家とミャンマーの提携先といった当事者が異なる国籍である場合の仲裁は、一般的に中立第3国で行われる。ミャンマーで営業する企業は通常シンガポールで行うが、ミャンマーの新仲裁法が制定されるまでは、外国企業はミャンマーの裁判所で外国仲裁判断を執行することができるか不安を抱えていた。
新法は地元裁判所からの干渉を排除し、ミャンマーへの投資を検討する企業に更なる信頼を与えると、国際仲裁裁判所南アジアの所長Abhinav Bhushan氏は述べた。
「外国人投資家は絶対的に中立である場所(管轄)での対処を望んでおり、国際仲裁にとっていい場所としてミャンマーが挙がることが重要である」と彼は述べた。
しかし強力な仲裁システムの利益を享受するためには、ミャンマーには良く訓練された仲裁人が必要であると、先週若手ミャンマー弁護士団体で講演した香港のGibson, Dunn & DrutcherのパートナーRobert S Pe氏は述べた。
「より大きな問題は、(成立した)法律をどのように使うかである」とPe氏はいう。「明らかに重要な特徴の1つは、仲裁における司法の干渉は最小限であり、裁判官は仲裁(判断)を支示しなければならないことが挙げられる」。
仲裁の強力な枠組みは、十分なレベルの専門知識と経験を持つ裁判官に委ねられるのだが、1944年ミャンマー仲裁法では、司法干渉は一般的で当然と考えられていたと彼はいう。
「法律はそれを施行しなければ意味がない」と彼は語る。
Pe氏は、商業問題の専門知識を持つ裁判官が配置した商業裁判所の確立を真剣に検討する必要があると主張する。商業裁判所は通常、簡略された手続でビジネス紛争を処理しており、商事事件が通常の裁判システムで立ち往生してしまうことを回避する助けとなる。
「外国人投資家が投資国を選ぶ際に調べることの1つは、良い商業裁判所があるかどうかである」とPe氏はいう。
誰もが知っていることだが、ミャンマーにそのような裁判所は存在しないと、ヤンゴンに拠点を置く法律事務所VDB Loiの弁護士Edwin Vanderbruggen氏はいう。「そのような裁判所をミャンマーで設立することの難しさは、人材不足である」と話した。
下院議会議員Myint Lwin氏(国民民主連盟(NLD),パズダウン地区)は、現在ミャンマーにある唯一の仲裁センターは、ミャンマー商工会議所連盟(UMFCCI)に設置されるものであるという。しかしこれを変えていく努力も行われている。
「UMFCCIは仲裁に関する特別委員会があり、独立した仲裁センターの設立を試みている」と彼は述べ、これは商業裁判所に向けてのステップになると話した。
「私たちは(独立仲裁センターに関する)提案書を政府に送っており、交渉も行う予定である」。
またミャンマーは、資格を持つ仲裁弁護士の新しい時代を作ろうと努力している。
若手弁護士を対象とした2日間のトレーニングワークシップの開会におけるPe氏の挨拶は、国際仲裁のあらゆる面、特にミャンマーの新仲裁法の背景に言及したものだったとAinzail Kyaw Soe氏は述べた。
国内仲裁も問題ではあるが、新しい法律は外国仲裁判断に対する裁判所の干渉を最小にすることを保証すべきである。Ainzail Kyaw Soe氏は、仲裁紛争がミャンマーの裁判所で正確に処理される状態になるには5年から10年かかるという。
「強力な法的枠組み(を構築する)一方で、裁判官の教育も忘れてはならない」と彼女は述べた。
(Myanmar Times 2016年8月26日版 第11面より)