しわくちゃで、弱りかろうじて自力で立っていられるTin Nyunt氏は、繰り返し保釈を拒否された72歳の女性である。
Tin Nyunt氏は3月16日の逮捕後倒れ入院していたが、5月2日よりヤンゴンの悪名高いインセイン刑務所に拘置され、彼女の家族が半身不随のため必要だという薬を使用することができずにいた。
6月17日にミャンマータイムズがボタタウン地区裁判所にあるTin Nyunt氏の独房を訪ねた際、彼女は首、背中、足と痛む全身を指し示した。彼女は目に見えてやつれており、高血圧と慢性心不全を患っているため湿った天候の中動くのは苦痛であると訴えていた。
聴取の時間が来ると、Tin Nyunt氏は家族に支えられながら独房から法廷までの2段の階段を上っていた。彼女の健康が思わしくないことから、保釈要請の否認毎に彼女の家族の不安は募る一方、裁判官は保釈を保留にし続けている。
「これは私の義母に対して不公平である」とThida Myint氏は述べた。
しかし専門家は、ミャンマーの壊れた司法システムの中で、保釈を得るために彼女ができることはほとんどないという。
「申立人は、被告の釈放を妨げるためお金を払うことができる」とオーストラリア大学のNick Cheesman氏は自身の著書Opposing the Rule of Lawに記している。
彼は、ある女性が自分の娘と駆け落ちした男性を拘置、逮捕するため警察と裁判官にお金を払った1996年の事件を例に、この事件を説明した。
Tin Nyunt氏の家族は、彼女の監禁の背後にある同様の動機を主張している。彼女の息子が3月に25歳の従妹と駆け落ちし、彼女もまた義娘の誘拐の疑惑がかけられている。
「私は母親に対して申し訳なく思っている。起きてはならないことだった」、「彼女は(息子の結婚を)知らなかった」とThan Naing氏は述べた。
起訴は3月13日に、Hla Myint氏が甥のThan Naing(35歳)によりThida Myint(26歳)が拉致されたと主張したことによる。夫婦は共に姿を消し、Hla Myint氏は共犯であるとして義妹のTin Nyunt氏を告訴した。
しかし家族はHla Myint氏の娘を家に帰すよう求めるでっち上げた起訴と司法手続きへの干渉を非難している。
Than Naing氏は、叔父はTin Nyunt氏が無実であることを電話中に認めたが、彼の娘が帰るまで訴えを退けないつもりでいるという。
ミャンマータイムズが連絡をとると、Hla Ko氏はコメントを拒んだ。
裁判所の向かいにある警察署に駐在している逮捕した警察官は現れず、申告人Hla Myint氏は裁判で手続きを長引かせ保釈の拒否に寄与している。
Tin Nyunt氏の家族によるとは、弁護士は4度保釈を要請している。
最初の要請では被告の年齢と既存の病状を記し健康を理由に保釈を訴えたが、Aung May Myo裁判官により拒否された。
2回目の要請では、裁判官が双方からの聴取を終えていないことを理由に保釈を拒否された。
直近の6月20日に、裁判官は今日の聴取を設定する前に保釈の要請を検討すると述べたと伝えられていた。
保釈の要請の一つは認めれたが、その通告は高齢である被告が保釈の対象であることを証明しているとTin Nyunt氏の家族を激怒させるものだった。
3月29日に彼女は、ティンジャンのため一時的猶予が認められた。
Than Naing氏は、保釈の破棄は裁判制度に不当な圧力がかけられていることを示していると信じる。
「一度目は母が保釈されうるとするもので、その次も同じ結果だったが、母の保釈は実現していないので裁判の裏に隠れた何かもしくは誰かがいると考えている」と彼は述べた。
国際司法委員会の顧問弁護士Zar Li Aye氏は、Tin Nyunt氏の保釈から考えられる法律上の条項がいくつかあるという。
「本件は何度も延期されていることから被告の権利侵害である。被告は公正な裁判を享受しなければならない」と彼女は述べた。
さらに「保釈が許されない犯罪でさえも、被告は刑事訴訟法491条に基づき裁判官の自由裁量で保釈されうる。」という。
彼女はまた、刑事訴訟法第497条では『16歳以下又は女性あるいは病気や寝たきりの人』の場合、裁判所から釈放することができると規定されていると指摘した。
Tin Nyunt氏の家族は、彼女の逮捕を取り巻く健康問題は保釈を求める理由の立証に十分であると訴える。
もう1人の義娘Pann Ri氏は、3月16日に自宅に警察がTin Nyunt氏を逮捕しに来たとき、彼女は倒れ西ヤンゴン総合病院への入院を求めたと話す。
3月23日、退院後、彼女が介助を受けながらタクシーに乗るときに警察は彼女を捕まえた。彼女は再び倒れ、酸素マスクの使用を必要とし病院に再入院したと伝えられている。
警察はTin Nyunt氏は3月29日に病院からボタタウン地区警察署に移り、尋問を受けティンジャンの釈放を受けるまでの夜を過ごしていると発表した。
祝日後の5月2日にも彼女は尋問に答えるよう呼び戻され、裁判所に移動し、刑法366条に基づく刑が課され、インセイン刑務所へ移送され、これには彼女の弁護士も驚いた。
Tin Nyunt氏の息子の1人であるMyo Myint氏はミャンマータイムズに、刑務所にいる母に会いに行くと、母は非常に疲れ弱っていたと語った。
彼の妻であるPann Ei氏は、医者は十分な治療を行わず、また母は左半身麻痺の治療やビタミン注射などの適切な治療を受けられずにいると主張した。
インセイン刑務所の状態、すなわち軍事政権下の政治犯及び人権侵害と国際的同義は、賞賛には程遠い。2014年にミャンマータイムズは刑務所の状態を調査し、結果は処刑や拷問の時代からは改善しているが、汚職は依然として蔓延し囚人の健康は急激に悪化する状態であった。
2015年にニュージーランド人のPhilip Blackwood氏が人権活動により訴えられた事件では刑務所にいた数ヶ月間で、彼は22キロ(44パウンド)も痩せ栄養失調になったそうだ。
Tin Nyunt氏の待遇は再び、汚職文化が根付き政治的干渉や暗記学習によって凝り固まったミャンマーの刑事裁判システムに対する疑問を生じさせた。
「法学教育のレベルは低く、多くの弁護士や低級裁判官でさえも、刑事手続きに精通していない」とIJCの国際顧問弁護士Vani Sathisan氏はミャンマータイムズに語った。「このことは何十年もの間司法システムが機能していなかったこともあり、ひどく不公平な裁判と適正手続きの権利の侵害の原因となっている」。
最近世界司法プロジェクトの法の支配インデックスで、ミャンマーは調査国102ヶ国のうち91位であり、刑事裁判システムは96位、基本的権利では100位であった。またミャンマーは「公判前拘留」や「裁判の遅れ」、「乏しい司法判断」に大きな問題があると記されている。
Tin Nyunt氏の家族は、今日の審議で保釈が認められると前向きに考えるよう努めているが、その保証はない。
「公正であって欲しい」「裁判官による公平な判断でこの話が終わると期待する」とMyo Myint氏は述べた。
(Myanmar Times 2016年6月24日版 第5面より)