捨てられた赤ちゃんが語る性教育の欠如、シングルマザーへの支援を

5月の停電した暑い夜、Thidar Han氏は病棟管理者として働いているヤンゴンのミンガラータウンニュ地区の裏道で21時頃、赤ちゃんの泣き声を聞いた。
Thidar Han氏は暗い路地を進むも何も見えない。しかし泣き声は聞こえ続けていた。先に進むと、彼女はビニール袋の中にまだへその緒が付いたままの捨てられた新生児が顔を下向け横たわっているのを見つけショックを受けた。
「赤ちゃんは幸運なことにしっかり呼吸し生きていた」と彼女は言うが、母親は見物人が回りに集まる中痩せた赤ちゃんに授乳していることにショックを受けたともいう。
体重4パウンド12オンスの赤ちゃんはヤンゴン中央女性病院に運ばれ、集中医療が施され一命を取り留めた。
ヤンゴン警察本部の職員によると、5月にミンガラータウンニュ地区で母親により捨てられた赤ちゃんはこれで二人目であるという。一人目の赤ちゃんは病院へ運ばれたが治療の甲斐なく助からなかった。
全国で捨てられた新生児の記録が本部で保管されている。記録は完全には程遠いものだが、このような事件は2011年には国内で6件だったものが、2013年に9件、2014年に12件、2015年に20件と増加を示している。
「未解決の捨て子のケースのみ警察に報告される。そのため記録されていない事件もあるだろう」とある職員は述べた。ほとんどの事件がシャン州、ヤンゴン、マンダレー、マグウェ管区で起きている。
出産後病院に子どもを置き去りにする母親がほとんどだが、ドアの前や道に新生児を置き去りにするケースもある。警察の記録によると、ヤンキン子ども病院ではこのような事件が2013年の2件、2014年の4件から上昇し、2015年には5件記録されている。
必死なシングルマザー
ヤンゴンにあるNGO団体Akhaya Womenの代表Htar Htar氏は、悲惨な事例はおそらく想定外の妊娠をした切実な女性が、父親に見捨てられたか貧困により子どもを育てることができないと考えたことによるものだと述べた。
彼女によると、未婚のシングルマザーになることはミャンマーの保守的社会では非常に恥辱的なことであり、NGOや政府がこのような母親を支援するサービスを行っているが、ごくわずかである。
Htar Htar氏は「未婚女性は父親のいない子どものため責められる」、彼女らを支援するサービスは「ミャンマーの人々が人権に関して更なる知識を付けたときに大きくなる」と話す。
堕胎を罰する古い法律も、おそらく女性に望まない妊娠を強いており、政治家はこのような法律の影響をしっかり考えてほしいとHtar Htar氏は語った。
違法堕胎
刑法によると、堕胎は10年間の懲役が科されることがあるが、起訴されることは非常にまれで通常は2年から3年の懲役が言い渡される。このような刑罰により、ミャンマーには正式な堕胎クリニックがなく、そのため堕胎は規制を逃れた医療行為として秘密裏に行われている。12歳以下の子どもの放棄も処罰され、最大7年の懲役が科される。
ヤンゴンのラタ地区出身で4人の子どもの母であり未亡人のNyein Nyein氏(45歳)は、貧しい女性が子どもを育てることはミャンマーでは難しいと語る。彼女は避妊と女性や少女が堕胎という手段をとることができる法的選択肢を作ることはよいことだと信じる。
「現在違法に行われている堕胎ではあるが、これは秩序をもって許容されるべきである」と彼女はいう。
ミャンマー民法によると、母親は自身と子どもを捨てた男性に金銭的支援を要求する申し立てを行うことができる。
パズンダウン地区の警察官は、このようなケースは稀であるという。「女性は妊娠に対して恥ずかしさを感じているため、無責任な相手を起訴することはない。しかし実際には、このような男性こそ不注意を恥じるべきである」と彼は述べた。
ヤンゴンに拠点を置き子どもの権利問題を扱う弁護士Kyee Myint氏は、子どもとシングルマザーの支援のためにより多くの政府資金を投入すべきであるという。
政策
死亡しているかどうかに関わらず、新生児を捨てる行為はしばしば「赤子投棄」と呼ばれ、多くの国でみられる。多くの場合が、準備ができていない若い女性、10代の妊娠であり未婚である。
南東アジアにおいては近年、マレーシアでますます一般化しており、2005年から2011年にかけて517人の捨て子が見つかっている。その理由の多くは未婚のまま生まれた非嫡出子であることに対する非難があるようだ。
一部の欧米諸国では、子どもの世話が保証され赤ちゃんを匿名で放棄することができる「赤ちゃんボックス」や「赤ちゃんポスト」が正式に導入されている。
ヤンゴンミンガラタウンニュ地区出身の国民民主連盟下院議員Phyu Phyu Thin氏は、ミャンマーにおいては性教育と家族計画プログラムが望まない妊娠問題への対処に役立つと考えられ、堕胎合法化の議論に先立ち、取られるべき対策であると述べた。
「この問題の主な原因は、若者のセックスに対する知識が不十分なためである。十分に理解していないため、望まない妊娠という結果が生じる。そしてこのことが、堕胎と新生児遺棄という問題を生んでいるのだ」「私は性教育と家族計画がこのようなケースの減少に必要だと思う」と彼女は語る。
社会福祉・救済再復興省の育児局の局長Aung Kyaw Moe氏は、貧困とシングルマザーへのサービスの欠如に対処するべきで、「捨て子と中絶を減らすためには若者に対し性教育を行うべきである」と述べた。
Aung Kyaw Moe氏は、捨て子は公立の孤児院で保護されることになると述べた。
省のウェブサイトによると、ヤンゴン、マンダレー、マグウェ、モーラミャイン、Kengtungに合計5つの捨て子と孤児を受け入れる政府の保育施設がある。この施設では子どもたちは小学校修了まで過ごすことができ、その後ヤンゴンに2つあるセンターに移る。そこでは18歳になるまで住み込みで職業訓練を受けることが可能だ。
ヤンゴンにあるShwegonedine Orphanage Centerの代表Khin Yu Dar Yee氏は、過去5年間で管区政府の保健省及び社会福祉局に保護された128人の子どもを彼女のセンターで受け入れ、そのうち45人が養子として引き取られたという。
彼女は何人の子どもが捨てられているか述べることは出来ないが、個々の経緯に関係なくすべての子どもたちが緊急のケアを必要としていると強調した。
「私は子どもたちが親切で望ましい新たな両親に出会うことを願っている」と彼女は述べた。
(Myanmar Times 2016年 6月7日版 第2面より)