成長したミャンマーのマイクロファイナンス

ミャンマーのマイクロファイナンスは変曲点にある。昔ながらの既存事業者や新規参入事業者、技術、改革、投資の融合は、近代産業をもたらしうる可能性を秘めている。
この新旧の狭間において、信頼できる公平な成長を促進するためには何が最も効果的だろうか?
国際金融公社での経験では、市場に基づく多様な資金を用意し、様々な販売経路によって製品の総合的な選択を提案できる正式なマイクロファイナンス会社は持続可能な業界の中心的存在となる。
これは地方開発と金融抱合における国家目標を支援するための市場の位置づけを決める歴史的な機会である。
何十年もの間、ミャンマーにおけるマイクロファイナンスの提供は国際非政府組織(NGO)とミャンマー農業開発銀行(MADB)が担っていた。
これらの機関は主に50万チャット(400米ドル)までの小規模融資を行っている。このように融資が限られている中では、大半の人々が過度に高いレートの非公式、無規制の貸付を使用せざるをえない。
ちなみに非公式価格はよく「5対6」と表現される。例えば、月の初めに5万チャット借りた場合、月の終わりに6万チャット返済しなければならない。つまり、1カ月あたり20%の金利が適用されるのである。
年間ベースで考えると、この非公式レートは年間30%の法定金利よりも大幅に高い。
今日、ライセンスを持つ250社以上の現地及び国際マイクロファイナンス機関(MFI)があり、多様なマイクロファイナンスの提供が可能となってきている。
さらにMyanmar Financial Diaries ProjectやMaking Access Possible Reportといった詳細な市場調査及び豊富な資金調査イニシアティブによってマイクロファイナンスの需要について知られるようになってきた。
この豊富なデータは、ミャンマーのマイクロファイナンス業界の成長に合わせて手法を調整し、成長する機会をもたらしている。
マイクロファイナンスの世界的傾向は、NGO等の伝統的な形態から企業の形態へ移行しつつある。マイクロファイナンスの経験を持つ株主やスポンサーといった規制を受ける民間のMFIは、長期的な融資が可能となる強い財源を提供する傾向にある。
このようなMFIは、投資家、監査人、顧客といった全てのレベルでのコーポレートガバナンス、リスク管理方針やその手順、透明性といった責任ある金融原則を典型的に擁護している。
このような金融機関には、顧客の保護と業務の透明性を図るため、最低資本金、不良債権の引当計画、価格決定や報告といった要件を遵守するよう規定が設けられている。
一般的に民間MFIはより簡単にすばやく融資し、技術、スタッフ開発、製品と販売経路の開発及び調査への投資を支援する。
統制が取れ、資本の整った企業を維持することは必要なことではあるが、それだけでは不十分である。MFIは更に持続可能なベースで成長するポートフォリオに資金供給できなければならない。
マイクロファイナンス業界がグローバルに発展するに従い、投資家の種類も民間の機関投資家、商業銀行、プライベート・エクイティ・ファンド、個人投資家と大幅に拡大した。
ミャンマーでのマイクロファイナンス業界の商業化と専門化も同様に、FMIの資金調達源を多様にし、投資家を引き付けている。
現在の資金提供は、ミャンマーマイクロファイナンス業界の唯一最大の障害である。規定ではレバレッジ(債務自己資本比率)が5:1となっているがまだ業界ではこのようなレバレッジは見られない。
マイクロファイナンスが盛んな国では資金調達構造が多様になる傾向がある。つまりMFIが市場ベースで様々な資金調達源-現地及び国際債券、普通株式、貯蓄など-にアクセスすることができるということだ。
変動為替相場制への移行により、貸付通貨と借受通貨を一致させるというFMIの機能は健全なリスク管理に必要不可欠となった。
ヘッジツールやスワップ市場といったソリューションの発展によって、MFIは長期的な現地通貨資金を調達し外国為替リスクを最小限に抑えることが可能になる。
成長曲線を描きながら、統制の取れた資金力のある機関が形成された今、第3に重要なこととして効率的に関連するサービスを提供することである。
歴史的にマイクロファイナンスは、貧困層の金融ニーズの多くを満たすことができる小規模ローンであるという理論のもと成長したものだったが、現在貧富の差に関わらず全ての人が金融サービスを必要としていることは明らかである。
貯蓄があれば、授業料などの計画的な支払いや医療費などの予期せぬ支出に備えることができる。送金や支払いサービスによって、企業や個人は国境を越えて安全に送金することができるようになった。
クレジットは様々なニーズに対処するのに適している。世界は一つの融資サービス以上の金融サービスに向けて動いており、ミャンマーもそうあるべきである。
サービスの提供手段の多様化も同様に重要である。ミャンマーにおける支店普及率は10万人当たり2.6支店で、隣国カンボジアの4.8支店と比較し極めて低い。
しかしミャンマーはスマートフォンの保有率が極めて高い。3,750万人の携帯電話所有者のうち66%がスマートフォン使用者で、カンボジアの2,580万人に対する29%と比較して高い。
新しい技術と3Gデータの急激な使用可能地域の増加は、タブレット、point-of-sales(POS)デバイス、携帯電話を使用した取引を促進し、金融サービスの提供方法に影響を与えている。
このようなことから、MFIは毎日異なる場所でより多くの顧客と接触することができるようになった。特にこれがゼロサムゲームでないことを示す例がある。ケニアではモバイル決済及び代理店数が拡大するにつれて、これまでの銀行自体もまた成長した。より大きく取り込むことで金融業界の全ての領域に利益をもたらすのである。
ミャンマーは様々な分野で成長しているが、特権の使用には責任が伴うものであり、全ての提供者が平等であるわけではないことを覚えておく必要がある。
一般の人々からの預金の仲介といったサービスを拡大しているMFIは、より厳しい規制の対象とすべきである。
規制の枠組みは、製品やサービスを提供する人達がそのようなサービスや製品の提供が可能となるような十分な資本、ガバナンス、能力などの基盤を持つことを確実にするために不可欠である。
最後に、ミャンマーで包括的な製品やサービスの提供を行う特権を持つものは厳しい基準を遵守できる統制のとれた機関でなければならない。
(Myanmar Times 2016年3月4日版 第10面より)