ミャンマー初の証券取引所は、本年開設されるにしても米国財務省による経済制裁下にあるというリスクを抱えている。
ヤンゴン証券取引所は、米国の財務省外国資産管理室(OFAC)による規制の対象としての明確な指定を受けていない。
しかし、米国制裁の下、Myanma Economic Bank(MEB)が51%出資していることから、米国の法律上、自動的に制裁対象となると、米国政府職員は明らかにした。
米国大使館の報道官によると、OFAC規制に基づくSDN ( Specially Designated National ) リストに記載された人物が50%以上出資する法人等は、米国制裁の対象となる。
「OFACがこのSDNリストに記載したかどうかに関係なく、50%ルールは適用される」。
この状況に詳しい人々は、損害を受ける可能性はあるがおそらく然程大きなものではなく、米国制裁の下で証券取引所の開設が既に遅れているという事態は米国政府が直接的に意図したものではないと述べた。
しかし、複雑な米国制裁システムにみられるように、法の複雑さは予期しない結果をもたらしうる。
2013年2月には、米国市民に対し、MEBを含む4つの主要金融機関における口座の開設やその他金融サービスを含むほとんどの取引を行うことができるとする一般ライセンスをOFACは発行した。
しかし、個別の許可なしに、この4つの銀行と行う又はこれらの銀行への新規投資を許可していない。
米国大使館報道官は、企業秘密法に基づく制限のため、ヤンゴン証券取引所(YSX)が米国制裁で禁止されている取引を承認するライセンスが与えられているのか又はこれを要求しているのかといったコメントはできないと述べた。
米国財務省、金融インテリジェンス及びテロリズム広報担当者のElizabeth Bourassaは、OFACは特定の民間企業といかなることも議論することは出来ないと述べた。
東京証券取引所の運用会社である日本証券グループと大和証券グループは、12月にオープン予定であるYSXの株式49%を所有する。この2つの日本企業は、2014年12月23日にMEBと契約書を締結した。
この契約は、覚書を締結した2012年5月29日以来の議論の結果である。両者は資本金320億チャット(2,490億米ドル)で、ヤンゴン証券取引所合弁株式会社とよばれる合弁企業を設立した。
東京に拠点を置く大和証券グループの広報担当者は、同社のパートナーに関する計画等、とりわけミャンマー政府や現地企業の採用についてコメントはできないと述べた。
MEB職員は電話に応答することはなく、ミャンマー証券取引委員会の会長U Maung Maung Thein氏からコメントを得ることはできなかった。
彼のアシスタントによると、同氏は、先週8社に暫定引受ライセンスを付与した後、10日間米国を訪問した。
YSX引受業務ライセンスを申請したミャンマー投資の社長U Aung Htun氏は、もし証券取引所が米国制裁の影響を受けるのであれば、これは政策の適用を誤ることになるだろうと述べた。
「証券取引の機能は経済の発展に不可欠なものであり、実際、透明性を高めるであろう。したがって私は免除されることを期待する」と彼は述べた。
免除が与えられない場合、非米国人は米国制裁規制の対象にならないとして現地銀行は依然としてYSXに対応することができると、特にミャンマーにおける証券取引に関連するビジネスに詳しいコンサルタントは述べた。
同氏は、「しかし、少なくとも、これはデューデリジェンスとコンプライアンスを複雑にする」「アジア・ワールド・ポート・ターミナル(AWPT)の場合において我々が見てきたように、非米国銀行であっても制裁を受ける法人等と関与することを懸念している」と続けた。
ミャンマータイムズによって報道されているように、米国財務省は、港湾施設の使用規制は現存のミャンマーに対する貿易制裁に拍車をかけうると警告しており、2つの米国銀行協会から合弁書類を受け取った後、AWPTの使用を模索している。
同コンサルタントは、大和証券グループに関しては、少なくとも、現在、制裁対象のほぼ半分を所有していることが懸念されるという。
「純粋に技術的な問題として、大和証券グループは、理論上は制裁を受けうるが、制裁の対象とされるとは到底考えられない-YSXの制裁は米国政策の意図するところではないだろう」
「米国政策の懸念があっても、米国制裁を侮っている企業の実例が目に余る」と同氏は続けた。
(Myanmar Times 2015年 10月12日版 第8面より)