2012,2013年にほとんどの金融制裁が解除されたにも関わらず、米国の銀行はミャンマーとの送受金に依然として躊躇している。
ビジネスパーソンによると、送金を阻む明白な規則も多少存在するが、制裁に対する恐れ及び現地の市場に関する浅い理解がミャンマーと世界最大の経済大国とのお金の動きを阻んでいる。
特別指定国民(SDN)ブラックリストが存在し続けていることが、米国の銀行及び企業にミャンマーとのビジネスを思いとどまらせているという人々もいる。「米国の銀行は概して、いくつかの例外を除き、ミャンマーとの取引を断固として拒否している」とヤンゴンにあるHerzfeld Rubin Meyer& Rose法律事務所のEric Rose氏(Lead Director)は述べた。
ブラックリストに載っていない企業やNGOまでもが、ミャンマーにある彼らの銀行口座への送金でトラブルを抱えるという結果が起きていると彼は述べた。
SDNのブラックリストに載っていないミャンマー企業との事業を検討する米国の中小企業の多くがHerzfeld Rubin Meyer& Roseと契約し、同社の助言に従って、ビジネスを進める前に相手側の銀行について確認するとRose氏は述べた。「その後、例外なく、販売取引ですら続行しないことを選択する。ミャンマーとは限定的にしか取引をしない米国の大手銀行を含め、米国の銀行はSDNに関係なく、OFAC(米国財務省外国資産管理室)のライセンスがなければ、ミャンマーから米国に資金を送金することができないためである」と彼は述べた。
送金を遅らせている主要な問題は、法律の条文または存在している制裁のためではない。
金融制裁を受けていないミャンマー機関への米国の金融サービス(Financial export)は、2012年に発行されたビルマ・ジェネラルライセンス16に基づいて、特別に認められている。
国のおおよそ25ある民間銀行の内2つ、Ayeyarwady銀行とAsia Green Development銀行及び5つの国営銀行は依然として米国の制裁リストに載っている。
しかしAyeyarwady銀行、Asia Green Development銀行、国営のミャンマー経済銀行、Myanma投資商業銀行は、2013年2月に発行されたその後の通常許可によってカバーされ、米国人が銀行口座を開設し金融取引することが可能となった。
米国による別の制裁は依然として残っている。Steven LawやU Tay Zar のような有名起業家と彼らのビジネスは依然としてブラックリストに入っている。米国人はまた、ミャンマーで最も巨大な複合企業の2つであるミャンマーエコノミックホールディングスリミテッドやミャンマーエコノミックコーポレーションのような軍運営の会社とのビジネスは禁止されている。
米国国務省は、また、ミャンマー経済に50万米ドル以上の投資している事業は、同国での事業内容を公開した年間報告書を提出することを求めている。これまでのところ、Coca-Cola、Colgate Palmolive, Western Unionを含む15の会社が報告書を提出している。いくつかの企業、Gapのような企業は、提出の要件に達していないが、自発的に提出している。
制裁は2012年以降大幅に縮小されたものの、いまだ継続されているということが、国内投資の萎縮効果となっているとRose氏は述べた。
アメリカ大使館の報道官は、銀行が彼らの事業に関する疑問に返答するのが最もよいとしながらも、報道官が話した銀行代表者によると、彼らの躊躇は米国制裁の誤解によるものではないとのことである。
「むしろ、銀行は他の外国人投資家と同様に、費用対効果分析のもととなる政治的経済的要因やリスク因子を考慮している」と報道官は述べた。
「在ヤンゴン米国大使館の外国商業サービス担当の職員は、ミャンマーへの市場参入を検討している米国の銀行を含め、米国のビジネスに積極的に関わっている。国務省はまた、制裁に関する取扱いの現状について業界を教育するため、国際銀行協会に情報を提供している」
2015年5月のブリーフィングでは、個別に、外国銀行のリスクとなるアンチマネーロンダリングに関する懸念が、米国職員よって指摘された。ミャンマーは、アンチマネーロンダリングとアンチテロ金融組織の金融活動作業部会(Financial Action Task Force:FATF)によって、繰り返しウォッチリストに挙げられている。
ミャンマーとのビジネスについては銀行による社内決定であり、大使館によるものではない、と彼らはつけ加えた。
米国の役人は制裁の影響を過小評価していると言う人々もいる。Rose氏は、FATF報告書は懸念事項を表している一方で、ミャンマーと同様リストに挙げられているものの、同じ制裁に直面していない国も多く存在する、と述べた。「私は、どの銀行がアルジェリアやエクアドルとの取引で問題を抱えているか覚えていない」と彼は述べた。
SDNと取引している銀行に課される莫大な罰金は彼らにとって脅威であり、FATFの存在対ミャンマーではない、と彼は述べた。
Rose氏は、銀行のデュー・デリジェンス要件を見て、これを2014年8月13日に発行されたSDNルールに関するOFACの強化と合わせると、「ミャンマーのお金が関係する場合、ひとつ間違えば莫大な罰金を科される可能性を考えて、銀行がいかに他の道を選択するか、現時点では米国企業がミャンマーでは小規模な取引に留まっているということを簡単に見ることができる」と彼は加えた。
Ayeyarwady銀行の主任ビジネスオフィサーのPhilippe May氏は、いくつかの国際銀行は米国のルールによって求められている調査のレベルをはるかに超えていると述べた。「国がSDNリストを持っている場合、銀行はそこで事業をしないだろう」と彼は述べた。
制裁そのものの性質に関する認識不足も問題の一部である。法令遵守担当職員は、コンピューターのデータベースを通して、ミャンマー間取引を遂行している。
それらのデータベースの検索要求(クエリー)は、部分的な確認となる。「多くの場合、これを使用する人々は、ビルマの名前について知らない」とMay氏は述べた。「リスト上にMaung Maungの名前があったとして、銀行がAung Maungの名前で検索した場合、その2人の人物が全く関係なくても、部分一致となる」
銀行はまた法律を超えていくことができる。「法令遵守の担当者がミャンマーに関して神経質である場合、彼らはミャンマーという国を完全に外してしまうだろう」
「銀行はこれをオープンに言わないのだが」とMay 氏は述べた。「顧客は送金するとき(そしてそれが銀行の法令遵守基準に抵触するとき)とり乱すことになる。お金は消えたようになり、その解決に数か月を要する」
この問題を避ける最も良い方法は、米国の銀行を避け、ドル紙幣ではなくシンガポールドルを使用することである。
「それがトラブルの95%である」と彼は述べた。「人々は米ドルに執着しすぎている」。
一度で全額を送金したり、熱心すぎる銀行に妨げられないことを期待する代わりに、100ドル程度の送金を試すことができる。金額は小さいが、銀行は同じ手続きに従うので、テスト送金の際に、それが認められるかどうか見ることができる。
しかし、全体的に、制裁の存在はミャンマーより米国企業にとって害を与えているだろうとMay氏は述べた。
「SDNリストの名残の存在は、国のリスク因子を増やしている」と彼は述べた。
依然として、ミャンマーに対する制裁が即時に解除される見込みはない。米国大統領のバラク・オバマ氏は2015年5月、継続されている制裁の翌年の取り扱いについて見直したが、解除する制裁の決定は今年後期に行われるミャンマー選挙を待つこととなった。
上院議会リーダーのMitch Mc Connell のように選挙で選ばれた米国議員は、米国の議員は(ミャンマーの)選挙を注意深く見ると述べた。「ビルマ政府が、正しく、透明性があり、包括的で、信用性があり、野党によって受け入れられる結果を伴う選挙を実施したら、世界中のビルマの友好国に対して、政治改革に対するコミットの持続を確実に示すのに大きな役割を果たすことになるだろう」とRoll Callウェブサイトによると22015年6月4日のスピーチで述べた。
「しかし、ビルマの人々が、選挙が自分たちの意思を反映していないとして受け入れなかった場合、国交正常化が遠のくだろう、少なくとも、我々政府機関の設置は非常に困難になるだろう」
(Myanmar Times 2015年6月19日 第10面より)