中央銀行の金利自由化計画に先んじてインフレが急上昇

世界銀行によると、米ドルに対する現地通貨価値の急激な下落、食料価格の高騰及び近時の原油価格の世界的な急上昇の結果として、ミャンマーのインフレ率は8月以来2年間で最高の8.2%を記録し、前年の5.5%から上昇した。
当局によって低インフレに安定するよう国の金利制度を再構築するという気運が高まっている中でさえもより高いレベルのインフレが起きている。
ミャンマー中央銀行(CBM)は現在、国の金利の自由化に関する新たな指令を発表する準備をしている。この指令は銀行の借り手に関する信用データの提供を任務とする信用調査機関が2019年半ばに設立された後すぐに発表されると、CBM副総裁であるSoe Thein氏は12月11日に述べた。
指令には5つの項目があり、現地金利の引き下げ、企業がミャンマーにおいて融資を受けることをより簡便にするためのガイドラインが含まれる予定だとSoe Thein氏は述べる。
それにもかかわらず、世界銀行は現在、2018年度中にインフレ率が8.8%に達し、翌年度には8%以上を維持すると予想している。 国際通貨基金(IMF)もまた、2018年のインフレ率は8%以上になると予測している。
経済を活性化するために貸出金利を調整すること及び、貯蓄を促進するために預金金利をインフレレベルより上に維持することのバランスをとるため、CBMには課題が生じる可能性がある。 現在、銀行は預金に8%の金利を支払い、ローンに13%の料金を請求している。 中央銀行の金利は10%である。

チャット価値下落
なぜインフレが生じているのか。さらに重要なのは、それは長期的に継続するのかということだ。
2016年の2桁台から昨年の4%から5%の間に落ち込んだインフレは、ミャンマーチャットの米ドルに対する急激な下落の後に急上昇した。4月以来、現地通貨は1ドルに対して約18%の価値を失っている。
2018年の初めに起きた、いくつかの州と地域の作物への洪水被害は、コメや食用油など食料品の価格を一度におよそ10%高騰させた。一方、2018年の第3四半期に世界の原油価格が年初の1バレル60米ドルを下回り75米ドルに急上昇したことも輸入燃料のコストを押し上げ、交通機関からレストランでの食事に至るまで、あらゆるものの価格が大幅に上昇することになった。
チャットはこのところ、1米ドルあたり約1,550チャットで安定しているが、世界銀行とIMFはどちらも、世界的な成長の鈍化と米中の貿易緊張の緩和を背景に、さらなる価格変動の可能性があると警告している。一方、米連邦準備銀行はまた、数回の金利引き上げを実施した。
原油価格においても変動が予想される。「石油輸出国機構による減産、イランの制裁措置、米国のシェール(頁岩)生産の増加、米中貿易摩擦、世界的な石油需要など、石油市場には依然として多くの不確定要素が存在するため、価格変動は今後も続くであろう」と情報機関Wood MacKenzieのリサーチダイレクターであるSushant Gupta氏は述べている。
Gupta氏は、ブレント原油の価格が2018年前半に1バレル当たり64ドルから65ドルになり、年末には1バレル当たり66ドルになると予想した。

マネーサプライ
その一方で、中央銀行による準備金の創出もまた約18%に漸減している。これはCBM目標である23%を下回っている。準備金の伸びが鈍化したのは、政府への貸付水準が低かったためである。過去2年間で、中央銀行の赤字に対する融資額は50%から19%へ半減以下となった。2020年までに、政府の目標は国債を通じて財政赤字を100%賄うことである。
一方、世界銀行によると、地方銀行への貸付も減少しており、現在進行中の改革から生じる不確実性により銀行の借入は減少している。
しかし最近になって、CBMは市場でドルを買い戻し、11月27日から12月6日までの間に3,774万ドルを払い戻し、外貨準備高を押し上げた。政府のデータによると、チャットの価値下落を抑えるため、CBMは4月から9月の間に約1,480万ドルを売却した。
IMFによると、ミャンマーの対外直接投資の流れにも支えられて、ミャンマーの外貨準備は現在約3ヶ月分の輸入利益にあたる。「引当金は比較的少ないが、当局は市場にあまり介入したくないと考えている」とIMFの関係者であるShanaka Peiris氏は述べた。
しかし、全体として考えると、「ミャンマーのインフレ率の急上昇は一時的なものであるはずだ。現時点では、インフレの根本的な原因(過度のマネーサプライの増加を含む)は、例えばCBMによる資金調達の削減などにより、現在はほとんど解消されている」とミャンマー開発研究所のリサーチダイレクター兼国家顧問の経済顧問を務めるSean Turnell氏は述べている。他の外部からの衝撃がない場合は、インフレ率は今後1年間で約5%に安定化すると、Sean Turnell氏はみている。
(Myanmar Times 2018年 12月 18日版 第4面より)