アセアン基準を満たすため、カードがEMVを採用

ミャンマー中央銀行は、アセアン地域の決済システムと一体化するための一歩として、カード決済技術をアップグレードすることを地元銀行に求めた。
中央銀行の局長Daw Than Than Sweはミャンマータイムズに対し「地元の銀行から発行されている全ての決済カードは、安全性強化のための手法として、EMV規格にアップグレードする必要があるだろう」と述べた。
現在、ミャンマーの銀行は、非EMVチップと分類されるデビットカード及びクレジットカードを発行している。そのため、これらのカードは、より安全性の高いEMV規格に切り替えられ、全ての地元銀行は、2020年までに旧カードからの移行を終えるだろうと、彼女は説明した。
JPモルガン・チェース社によると、EMVチップ技術は、クレジットカード及びデビットカード決済の国際規格になっている。開発者の名前にちなみ(Europay, MasterCard, Visa)、この技術は、カード保有者情報を保管し保護するマイクロプロセッサーチップが埋め込まれたスマートカードや携帯電話のように決済手段が特徴となっている。この「Chip and PIN」「Chip and Signature」としてよく知られる規格は、より洗練された暗号化技術を持ち、主に不正取引を防ぐためにデザインされている。EMVカードはまた、複製されにくい。
この国全体を通したアップグレード実施のため、23の地元の民間銀行によって共同で設立されたMyanmar Payment Union (MPU)は、Unionpay International (UPI)と2月7日に契約を締結した。
「地元の銀行が現在発行しているチップカードも同様に安全性が高い。しかし、EMV規格のカードは、最も安全であると国際的に認識されている。これらを踏まえ、国際基準に従うため、我々のカードも変換する必要があるだろう」と局長は述べた。
「我々は、カード保有者がより安全性が高い手段で守られていることを確実にし、アセアンのシステムの一員となる準備をしなければならない」と彼女は述べ、2020年までに移行が完了すると加えた。
アセアン地域では、シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ及びベトナムがEMV決済システム及びAsian Payment Network (APN)システムを運用している。APNはアセアン加盟国にとっての共通の基準となると、UPI東南アジアのジェネラルマネージャーが述べた。
アセアン加盟国10カ国のうち、UnionPayカードも幅広く受け入れられてきた。ミャンマー、シンガポール、マレーシア及びタイの国民は、UnionPayカードを国内消費のみならず海外旅行の際にも頻繁に利用している。
「ミャンマーも将来、アセアン独自のネットワーク、Asian Payment Network に加わるだろう」とDaw Than Than Sweは述べた。
APNは、2006年、アセアン加盟国、シンガポール、マレーシア、インドネシア及びタイが、それぞれを代表する中央銀行との調整のもと開始された構想である。この構想は、アセアンの中央銀行の代表で構成されている組織、当時ASEAN Pay 運営委員会に対する民間の対話パートナーとして組織された。APN及び運営委員会は、地域内において、国境を越えた、効率的で信頼性のある決済サービスのために共通の基準を確立し、フレームワークを構築するという任務を負っていた。APNは、アセアン加盟国の4カ国からのオペレーターをとりまとめ、後にフィリピンとベトナムが加わった。他の非アセアン・アジア電子決済のオペレーターも参加した。この構想は、国境を越えたATM、現金引き出し、残高照会及び資金送金の基準を確立した。
アジア開発銀行研究所(ADBI)によって2013年に発行された調査結果報告書では、アジア太平洋の決済システムにおける大きな成長による利益を期待し、アセアン地域の決済システムについて前向きに議論されている。個々の国での経済活動の成長は、決済取引の全体的なサイズ、規模、範囲を増大させる。決済の規模及び範囲がその可能性を満たすことは、地域で統一された国家の決済及び取引システムが求められる。
カード決済システムの標準化及び改善は、ミャンマーにとってゲームに参加するための道のひとつである。
地元の民間銀行の匿名希望の職員は、ミャンマータイムズに対し「銀行業界が発行した全てのカードのうち、MPUが発行したカードだけが非EMV規格であり、変換する必要がある」と述べた。
この見方は、中央銀行によって共有されている。
「MPUが発行していないカードは、既にEMVシステムを有している。中央銀行が原則的に述べていることは、MPU発行カードは変更すべきであるということである」中央銀行のカード機器管理局のU Zay Yar Aungが述べた。
KBZ銀行の職員は、「最近銀行から発行されたカードのほとんどはEMV技術システムを含んでいる。そのため、多くのカードが変換されなければならないと考えていない」と述べた。
MPU発行カード、ミャンマー銀行が発行するマスターカード及びビザカードの他に、MPU-マスター、MPU-ビザ、MPU-UPI、MPU-JCBカードが存在する。
UPIは、EMVアップグレードのために、MPUに対して、技術支援及び技術サービスを提供することに合意した。MPUは、2012年にカードの発行を開始し、現在、280万枚のMPUカードが23の地元の民間銀行から発行されている。
EMVカードの採用は、ミャンマーが、グローバルな金融システムと結合したいというサインである。去年3月、AYA銀行は、グローバルな決済ネットワークプロバイダーであるJCBのマークの銀行カードを提供する最初の貸し手となった。
同行は、日本のJCB及びMPUの共同マークのデビット及びクレジットカードの発行を開始し、それは、ミャンマー及び190の国と地域における3,100万にも亘るJCBネットワークにおいて利用できることを意味している。
なぜ、中央銀行は、技術移行の時期を設定したのか?おそらく、アメリカのスマートカード採用のゆっくりな歩みに従うことを避けるための方策である。
数年前、アメリカのカード会社と銀行は、他で実施してきたこと-アップグレードした決済カードの発行開始について、非常に渋っていた。しかし、政府による指導もなく、カード会社は、エコノミストが「鶏が先か卵が先か」と表現したようにジレンマに陥った。金融機関がこれらのカードの発行を渋っている間は、店舗はEMVカードリーダーを導入する理由がなく、カードが店舗に受け入れられない間は、銀行はそれらの採用を拒否してきた。
中央銀行からの指導により、ミャンマーの決済業界は間もなく、技術を採用することとなる。
(ミャンマータイムズ紙2017年2月16日号第7面より)