EITI、ミャンマーの資源産業に光を当てる

採取産業透明性イニシアティブ(EITI)によるミャンマー最初の報告は、数年前には「考えられなかった」企業活動に関し開示していると、NGOと市民社会団体はいう。だがこれは、ミャンマーにおける天然資源の管理方法を明らかにする初期段階でしかないと見られる。
独立したEITI事務官により集められた月々のデータをまとめた、最初の報告書は2013年4月から2014年3月のオイル・ガス、鉱山に関連する企業のライセンスと税金、収益に関するものであった。
「4年前には考えられなかった企業のライセンスと支出を公共に公開する段階を見ることは非常に強みになる」とNGO団体Global Witnessは評価する。
ミャンマーは2014年7月に採取産業透明性イニシアティブ(EITI)の候補国として承認された。この加入は、Thein Sein政権の資源産業の改革の重要なポイントとなった。同報告書では採掘企業とその所有者の詳細が報告されている。各企業が申請したエリアや許可の種類、許可が与えられた過程に関する基本的情報が記されている。しかし市民社会団体はミャンマーがEITIに参加したことに対し大きな期待を寄せてはいるものの、評価も厳しい。
「天然資源産業企業の全てが対象となっているわけではない」「主に採掘産業が多い」とEITIレポートの準備に関わった支援機関 (MSG)の一つであるMyanmar Alliance Transparency Accountability Coalition (MATA)の代表は述べた。
翡翠・宝石会社30社と採掘企業14社が報告の対象となったが、小規模企業のほとんどが対象から外れているという。
石油・ガス産業からの収益が100%の企業も報告されているが、13社と国営企業3社からのデータしかない。
宝石・翡翠産業においては、EITIは報告の対象のうち53%が同産業から収益を得、45%が採掘産業から収益を得ているとみている。
EITIがデータを集めた採掘企業から政府が得た歳入は合計3兆チャット(22億米ドル)に上り、このうち石油・ガス産業からの歳入が85%、宝石・翡翠産業からは13%、他の天然資源から2%となっている。
EITI報告書は調査期間の収益が少なくとも100億チャットの宝石・翡翠採掘産業の企業のみを対象とした。他の採鉱企業の収益は2億5,000万チャットであった。
「一定期間内の突合せ作業を行うためには、的を絞らなければならない」とミャンマーのEITIの上級技術政策アナリストのMinZar Mi氏は述べた。
政府は採鉱産業の200社に対し2000以上のライセンスを発行しているという。単に、最初の報告で全てを対象に出来なかったのだが、報告の範囲を毎年拡大していく予定だと彼は付け加えた。
MATAによると、データは紛争地帯の翡翠産業を含んでおらず、他の機関により公開されたデータも使用していないという。報告はGlobal WitnessやHarvard Ash Centre、Proximity Designsが公開した翡翠産業のデータを使用していないと、Global Witnessは述べた。同団体はさらに報告が、「翡翠製品の公開された政府統計を参照していない」「奇妙なもの」であると指摘する。
正式なEITIの報告として公開されたデータは独立したEITI事務官により集められなければならないと、Min Zar Mi氏は述べた。しかしEITI報告は「関連情報」項において他の情報源を使用することができる。ミャンマー採掘の関連情報はしかし、翡翠はミャンマー北部のカチン州で採掘されると簡単に述べられただけだった。
昨年公開されたGlobal Witnessの報告では、2014年の違法翡翠は、世界銀行が643億3,000万ドルと計算するミャンマーのGDPの約半分と同額だとされる。これは比較するとEITI報告に記された収益の22億米ドルにあたる。
違法翡翠取引は受益所有と法的所有の問題と絡み合っている。複雑で不明確な企業や代理オーナーの存在により受益者の特定が難しいこともあり、翡翠産業とその関係者はほとんど注意を受けないと、Global WitnessのJuman Kubba氏は昨年ミャンマータイムズに語っている。
またEITI報告もこの問題に悩まされた。報告に必要なEITIの国際基準は、「ボランティアの分類に落ちる」受益所有ではなく法的所有であるとMin Zar Mi氏はいう。
ミャンマーの報告に関するMSG会議では、市民社会団体と独立したEITI事務官は報告に受益所有を含めることを勧めた。この言葉の定義の設定不足は求められるものを作っていないことを意味するとMin Zar Mi氏は述べた。
結果は、企業の契約条件や真の所有者に関する情報がほとんど報告されていないと、Global Witnessは評価する。
しかしMin Zar Mi氏は、これらの問題は将来MSG会議で議論を行う必要があると指摘した。MSGは市民社会団体、政府職員、民間産業関係者、世界銀行の代表者で構成される。
しかし報告は、採掘産業からの巨額の収益を管理する上で国営企業が「他の口座」を使用していることを指摘している。報告された採掘収益の3兆チャットのうち2.5兆チャットは国営企業(SOE)によるものだ。これらのSOEは民間企業の土地関連税を徴収し、彼ら独自の事業もあるため、報告された数字以上の金額を政府に収めているとMin Zar Mi氏は述べた。
SOEの収益の1.5兆チャットのほとんどは、報告書で定義されるSOEの「他の口座」に入れられている。議会はこれらの口座からSOEがいくら使ったのかを監視している。しかし教育や医療といった現金が必要な政府省庁が使用することは出来ないとMin Zar Mi氏はいう。
同報告によると、2013-14年度の予算部門のデータでは、全予算歳入の44%を占める合計2.54兆チャットが「他の口座」に入れられた。しかしこれらの口座がどのように使われているかはEITIに明かされず、「収入、再投資、第三者への融資の記録といったSOEと国の間の資金送金管理」の規則について詳しく報告することができないと記されている。
EITI報告は財務省に対しSOEの収入を一般予算歳入として扱い、予算上の「他の口座」に関する更なる情報を公開すべきであると勧めている。
EITI法の導入、翡翠宝石産業の対象範囲の拡大、EITIを活用した管区レベルでの対話の促進といった他の様々な推薦はGlobal Witnessからの承認を満たしている。EITI報告作成の全手続きは、ミャンマーの市民社会の強化につながった。
「市民社会はEITI手続きに関わることで緻密な技術的能力を習得している」とMATAの代表者は述べた。「私たちは市民社会としてGlobal WitnessやNatural Resource Governance Instituteといった国際的な専門家とともに働くことができるよう、また政府の注意を引くような報告をまとめることができるよう技術的な能力の構築を続けている」。
(Myanmar Times 2016年1月22日版 第10面より)