労働者の権利の改革と我慢できない労働組合、NLDの課題

ミャンマーの産業労働力は、ますます組織化され自己主張が強くなってきている。

Myat Thiri Nwe氏はミャンマーの商業都市であるヤンゴンで仕事を見つけるため、エーヤワディ管区にある貧しい村を3年前に去り、その後まもなく市郊外にある多くの縫製工場及び靴工場の1つで仕事を見つけた。
現在24歳の彼女は中国人経営の靴工場で働いており、週6日、朝8時から夕方5時半まで働き、毎日のシフトには、生産目標を達成するためと彼女の収入が増加する残業数時間が含まれている。
だがこの厳しいスケジュールで、彼女の収入は月に約160,000チャット(136米ドル)で、この3分の1を彼女は村に住む家族に送金している。
労働者と労働組合は、工場の労働環境は乏しく、また危険であると主張した。食堂はなく屋外にいくつかのトイレがあるのみで、Myat Thiri Nwe氏の業務には靴にゴム底を押す機械の管理の業務も含まれており、もしその機械が詰まった場合、彼女は手動で靴を取り除かなければならない。
1年前に、他の労働者が機械での事故により指を無くすことがあったと彼女は述べた。
「時々、私は、この仕事は利益をもたらしているのか自分自身に尋ねる。しかし、私は家族を支援する必要があるため、辞めることができない」と話す。「また私は多くの休みを取ることができず、父が深刻な病気になった際、4日間しか家に帰ることができなかった」。
ミャンマーで急速に成長する縫製業界の労働者と労働組合メンバーと同様に、Myat Thiri Nwe氏は、国民民主連盟(NLD)が賃金を上げ都市貧困の労働状況を改善できることを望み、11月の選挙でアウンサンスーチー氏に投票した。
おそらく、政府にとって最も重要な課題の1つとして、NLDは、ミャンマーの縫製工場が成長を続け、貧しい労働力に利益が分配されるよう、労働組合、工場経営者と外国人投資家の要求のバランスを取る必要がある。
NLDが政権をとって5カ月が経ち、彼らの努力がヤンゴンの労働者と労働組合に与えた印象は小さい。
Myat Thiri New氏は、「私は政策を理解していないが、懸命に働いているにも関わらず労働者の権利を失っていると思う。縫製業労働者は、改善された労働条件を享受していない」と述べた。
「ミャンマーの労働者は、彼らの利益になる顕著な改善を見ていない。労働者の権利は保証されていない」と、労働者の権利に関する教育ワークショップを提供する労働組合協力委員会の政策部長Ye Naing Win氏は述べた。「国は、労働者の権利を確保することができない場合、発展することはない」。

労働法
近年ミャンマーの労働者の権利の状況で、いくつかの改善が行われている。前政府は国際的な縫製ブランド会社からの圧力を受け、数年の交渉を行った後の昨年、1日8時間労働で3600チャット(2.8米ドル)の最低賃金を初めて設定した。
しかし、ミャンマーは2011年に労働団体を合法化したのみで、業界との関係、そしてこれらを管理する法律とメカニズムは未整備のままである。
民政化されてから、縫製業界は急激に拡大し、国際的ブランド会社の代表とミャンマー縫製業者協会によれば、業界の価値は2012年の9億1,200万米ドルから2022年に80億米ドルまで成長し、それまでに150万人の労働者が雇用されることになる。
現在、ヤンゴン周辺の韓国、中国、現地経営者の工場で約30万人が雇用されており、そのほとんどが若い女性である。
英国を拠点とする援助団体Oxfamによる 2015年12月に行われた調査では、新しい最低賃金は「労働者が自分自身と家族の面倒を見るのには十分でない」という。また、22の工場でインタビューした労働者の43%が借金の罠に嵌っていることを指摘している。
同報告は、労働者の4分の1が残業を余儀なくされていると記述している。Oxfamは「問題が起こる場合、多くの工場管理者は労働者の話を聞いていない」とつけ加え、「安全性が大きな懸念である。労働者の3人に1人以上は、仕事で怪我を負っていると報告されている」。
全ミャンマー労働連盟の中央委員会メンバー及びYes One 縫製工場労働者代表であるWin Theingi Soe氏は、どれくらいの工場が、法律が定めている通りの最低賃金の支払いを開始し他の手当を払っているか不明確であると述べた。
「労働組合のメンバーでないと最低賃金を得られないため、工場で労働組合を設立するための支援を求める労働者もいる」と彼女は述べ、雇用主は労働組合に関与した労働者をしばしば解雇するとつけ加えた。
労働者権利の法律家Phone Phyu氏は、労働紛争仲裁はミャンマーで始まったばかりでその結果は一貫していないという。
「多くの労働法は、具体的に労働者の権利を定義していない。新政府はこれを改善する必要がある」と彼は述べ、現在の法律は労働者の権利に違反した雇用者に対し罰金を課しているだけだが、ビジネスライセンスの剥奪を含む変更を行うべきであるとも述べた。
NLD下院議会メンバーであり農家・労働者委員会(Farmers and Workers Affairs Committee)の書記官Thein Tun氏は、改正案は労働環境を改善するものであることが求められていると同意した。
「既存の労働法の改正は、まともな賃金と労働者の権利の促進のために重要な役割を果たす。私たちは、そうなるように努力している」とMyanmar Nowに話した。
「(しかし)私たちは欠陥や弱点が見つかった場合のみ、前政権の労働法の改善を試みている」。
彼の委員会は、6つの法律 -それらのうち、1959年雇用規制法、1948年雇用統計法など10年以上も前に制定された法律もある― を改正すべきであると述べている。
しかし、第一優先事項はミャンマーの平和維持の進展であり、その成功は経済成長と投資を刺激し、雇用機会と労働環境の改善につながるだろうとつけ加えた。

紛争解決
ミャンマーの多くの労働紛争は賃金に関連している。政府が発表した数字によると、昨年登録された紛争1019件のうち、約半数がこの問題に関するものであった。これら紛争のうち、353件は当事者間で解決され、165件は裁判になった。
ミャンマー縫製業者協会の副会長Aye Tun氏は、労働紛争仲裁を行う際、労働移民人口省は、多くの場合労働者を支持している。
「ほとんどの紛争で、労働局は雇用主の厳しさを考慮せず、賃金上昇を求める労働者の要求を満たすよう命じる」と彼はいう。
雇用主は政府が運営する社会福祉プログラムで、労働者の給料の5%を支払い、その額は年間3,000万米ドルに及ぶ。だが政府の非効率さは、怪我や病気で苦しむ労働者が、これらの手当を得ることを困難にしている。
労働移民人口省の局長Nyunt Win氏は、雇用者と労働者双方は、相互理解が必要であると述べた。
NLDが政権を取った時から、彼の部署は3,342の工場で、工場管理者、監督者、労働者に対して、労働権利の研修を提供してきたと彼は述べた。
ヤンゴンにあるGreat Wall 1 Shoe 工場で設置された労働組合の代表Phyo Wai Aaung氏(26歳)は、彼は賃金と労働環境の改善要求を主導してきたが、この行動により2015年3月に仕事を解雇された。
同件は裁判に持ち込まれ、彼は勝利したが、工場にとって軽い罰則が与えられたのみであった。
「工場は裁判評決に従い私を再雇用しなかったとして、100万チャット(約830米ドル)の罰金を科された。この罰金額は工場経営者にとって非常に少額である。私は上位の裁判所に上告する」と彼は述べた。
Great Wall 1 の人事部長Moe Moe Myint Khaing氏は、工場は労働者の意見に対してオープンであるが、正式な苦情は出されていないとして、Phyo Wai Aaung氏のケースでコメントを出すことを拒否した。
(Myanmar Times 2016年9月15日版 第5面より)