関税評価プロセスを改革し、税関の営業時間を延長し、デルタ地域における深海港を開発することは、提唱団体により提示された政策提言である。
この提言は、6月、ヨーロッパ連合ミャンマー商工会議所(EuroCham)により、EuroCham年間白書の一部として発行された方針書にて公表された。
方針書において、ミャンマ―の地勢的優位性を認識し、アジアの運輸のハブとなるために、深海港を建設する必要性を強調されている。ヤンゴン国際空港の拡大、ヤンゴン、マンダレー間における高速道路の最新化にもかかわらず、ミャンマ―の運輸産業は、依然として、不十分な港の許容能力、不透明な評価プロセス、そして、非効率な関税申告に悩まされている。
提唱団体には、Maersk Line Myanmar, Santa Fe Mobility Service, Dextra Transport, Damco Logistics Myanmar, Kuehne + Nagel, Rhenus Myanmar, Royal Haskoning DHV, Myanamr DHL, CMA CGMが含まれている。
デルタ地域における深海港が必要とされている
方針書において、港のインフラ設備の不足、渋滞は、海運において、重大な障害となっていると述べられており、デルタ地域において、深海港を建設することが要求されている。
「過去、港のターミナルにおいて、深刻な渋滞問題があったため、既存の港の設備は、貿易従事者にとって問題がある。
「当分の間、現在の主要ターミナルは、すべて、河ターミナルとされており、積荷ラインにおいて、大型船が乗り入れできない状況にある。
「現在、ターミナルに呼ぶことが出来る最大サイズは、ヤンゴン市ターミナルにおいては、167メートルLOA (船の全長)であり、ティラワにおいては、200メートルLOAである。」と方針書において述べられており、さらに、タイ、ベトナムは、約320メートルLOAを収容できると付け加えられている。
提唱団体は、デルタ地域において、よく整備された主要都市へ延びる道がある特別経済地域(SEZ)とともに、深海港を開発することを要求した。
「この深海港の設置場所をめぐる実現可能性調査は、12か月のうちに中立の立場にある者により、検証されるべきである。実施のための明確なタイムラインを含むことも提言されている。」と方針書にて述べられている。
不透明な評価プロセス
白書によると、この産業における最大の問題点は、評価プロセスにおいて、明確かつ統一化された政策がないことである。
「価格評価は、小売価格の場合がほとんどの、アリババやアマゾン等のオンラインサイトの価格に大きく依存しており、時として過大評価をもたらしている。」と白書にて述べられる。
提唱団体は、価格付けに対して、「職員と輸入者間において繰り返される事項」であるとし、反対している。さらに、価格が上げられることを避けるため、賄賂等の非公式な方法をとる取引者も存在し、この、時間がかかる、非公式な支払いは、取引者が直面する困難な問題である。
ミャンマー自動貨物通関システム(MAC-CS)が導入されたにもかかわらず、賄賂による支払いは、依然として、問題である。これは、依然として、手動の手続きがとられており、職員との面と向かった接触によるからである。いくつかのケースにおいては、評価プロセス終了まで、一か月以上かかっている。
管理における混乱もまた、問題を引き起こしている。
「さらに、税関(財務省傘下)は、商務省の輸出入ライセンス申請(商務省通知2016年74番)と同様の評価プロセスではない。
「結果として、頻繁に生じる2つの省により承認された価値の不一致により、さらなる不一致や複雑さが引き起こされている。」と白書にて述べられている。
この提言を認めることは、関税貿易一般協定(GATT) の取引価値概念である「輸入品の関税は、実際の取引価値と一致されなければならない」を推奨することになり、長期化するだろう。
「ミャンマーは、世界貿易機関(WTO)の一員であり、1995年の価値合意を批准している。五年間の実施準備期間が与えられ、さらにその後二年間の延長期間があったが、以降ほとんど進歩が見られなかった。」と白書にて述べられている。
提唱団体は、取引価格は、供給者の販売の結果、輸入者によって支払われた、または、支払われるべき価格に従わなければならないと訴える。よって、実際の市場価格が、関税価格と同じになる。この概念は、輸入者が、輸入する際に、忠実に、正確な価値を申告する責任にかかっている。
白書は、この提言により、積荷が、到着後すぐに、より早く税関手続きを通過することを可能になり、誠実な輸入者が、過大徴収されることなく、実際の価値に基づいた、関税、税金を支払う恩恵を受けると述べている。
輸入者の独自のシステムやプロセスに加え、請求書、L/C の銀行振込、保険証明書、フォームD等の様々な文書や情報源をもとに、関税が、申告された価値が取引価格と同等か証明できる。
「通関後の監査がより重要になり、大きな役割を担うことになる。」と白書にてさらに述べられている。
加えて、税関職員、輸出入者、通関事務代行業者、その他利害関係者に対するトレーニングの提供が、法的、制度的枠組みの見直しとともに、重要になるだろう。
税関の営業時間、コンテナの入港
方針書は、税関の営業時間の延長を要求し、コンテナが、関税申告が終了する前に入港することを認めるべきではないと助言する。
税関の現在の営業時間は、10時から5時である。提唱団体は、これが、渋滞、高い運輸コストを引き起こしていると述べている。さらに、2016年12月7日に昼間のトラック禁止が施行されて以降、大多数の積荷船が夜間のうちにターミナルに到着している。
方針書はまた、税関が24時間営業すべきだと助言している。
ミャンマーにおいて、現状では、関税申告手続きを開始する前に、コンテナをターミナルへ入港させることが必要である。方針書は、コンテナは、関税申告が終了する前に入港を認めるべきではないと主張している。この変更は、ターミナル周辺における渋滞を緩和し、全ての入港するコンテナの積荷の準備が整っているため、顧客が関税申告のプロセスをさらに早く開始できるようにし、大型船の運営の能率化の助けとなる。
白書において、ティラワに拠点を置く大善ミャンマー取締役社長である矢部智昭氏は、政策助言の大部分に賛成すると述べる。彼は、ミャンマ―タイムズに対して、運輸業者はよく、お客様から、「ミャンマーで事業を行うことは、想像以上に費用がかかる」と聞かれ、運輸コストが一つの要因である。
「インフラ設備と規制の欠如の両方が、ミャンマーにおける他のASEAN諸国と比べ、高い運輸費に起因している。」と彼は説明する。
彼は、評価プロセスが明確でないこと、トラック禁止の影響を明確に強調する。
「課税評価価値は、通常、増加された関税、料金により、請求額より高くなっている。ヤンゴンにおけるトラックの禁止は、トラックが一日に行き来できる回数には、限界があるため、トラック料金の増加を引き起こしている。」と彼は説明する。
今年初め、大善は、ミャンマーにおいて、初めて、保税非居住者在庫管理事業ライセンスを受け取った会社、つまり国内において初の保税倉庫会社となった。保税倉庫会社を有することにより、税関手続きを経ずに物品を搬出することができる。
しかし、矢部氏によると、保税倉庫会社は、ティラワ特別経済区域においてのみ認められているそうだ。
「特別経済区域外において、いくつかの倉庫運営者は、保税ライセンスを申請を望んでいるものの、当該規制が存在しないためできない。」
「保税倉庫に関する規制が全くないことで、港における渋滞が悪化し、より長い、税関申告プロセス、保管延滞料、滞船料等の追加の費用を要する。」と、彼は述べ、税関は、特別経済特区外における保管倉庫への規制を草案している過程であると付け加える。
ミャンマーCEAプロジェクト、ミャンマー部長であるJohn Hamilton氏は、ミャンマ―タイムズに対して、現在、すべてのセミトレーラー用トラッカーが禁止されているヤンゴン・マンダレー間における高速道路はトラックを許可すべきであると述べる。
(Myanmar Times 2017年7月21日版 第8面より)