包括的発展の鍵は人権デューデリジェンス

国際委員会は、予測通りに11月の総選挙で国民民主連盟(NLD)が圧倒的な勝利を収めたことを賞賛した。
外国人投資家を含め今回の選挙の結果を歓迎している者は、政権交代により経済成長が進み、制裁の緩和に至ることを期待している。
外国投資は間違いなく、この新しい情勢の中で大きく増加するだろう。もちろん、この投資は経済発展と雇用を十分にもたらす可能性がある。
しかし新政府は、優先順位に悩むことになるだろう。新政府は、経済政策を改革し、投資家が望む情勢の安定を確保しながら、少数民族とのこじれ易い和平手続きを完了させ、法秩序の堕落を欠落に取り組み、深刻な人権問題に対処しなければならない。
このような中で、外国人投資家はミャンマー国民と労働者が確実に経済成長の恩恵を受けるための重要な役割を担う。
多くの国際企業は既に、ミャンマーの低賃金の労働力に豊富な天然資源、地理的利便性を利用している。
昨年度中に、外国直接投資は81億米ドルを記録した。昨年は16の国内企業と、最大手のBGグループ, シェブロンコーポレーション, Eni, ロイヤルダッチシェルそして Total といった20の国外企業の石油・ガス事業において急激な成長が見られた。
安い労働力への期待は、縫製産業の急激な成長をもたらしている。アディダスグループ, ギャップ, H&M, マークス&スペンサー, プライマークといった多くの国際的ブランドは既に、ミャンマーにサプライチェーンを設立している。
また国は、外国観光客の前例のないほどの増加を見込んでおり、観光業は経済の最も早く成長する分野の1つになるとみている。アコーグループ, ヒルトンワールドワイド,ケンピンスキーはミャンマーにホテルを開業した。
選挙前に、国際労働組合総連合(ITUC)は「ミャンマーへの外国直接投資:人権にどのような影響を与えるか」と名付けたレポートを公開した。
レポートには人権リスクと石油・ガス、縫製、観光分野で事業を行う欧米企業の影響の調査と、人権デューデリジェンスのガイドラインが記されている。
「外国直接投資とこれによる労働権と団結の自由への影響は、今後、国にとって重要な問題となる」とミャンマー労働組合連盟(CTUM)の会長Maung Maung氏は述べた。
「私たちは外国直接投資を必要としているが、また同時に相応の賃金交渉と更なる団体交渉も必要としている」。
ITUCは労働者と雇用者は依然として新しい労働法に基づく権利に関して学習していることを強調した。団体交渉は増加しているが、未だ比較的珍しいものである。未完全な法律の履行は、雇用者が新たな権利を行使しようとする労働者を差別しうる、あるいはたまに差別していることを意味する。
アジア地域内で最低金額である1日3,600チャットとする新しい最低賃金は改善の一つであるが、依然として労働者が必要とする金額を下回っている。
NLDの勝利は、労働法の更なる改善を含む改革の強化に希望をもたらした。しかし、特に労働者と団体権、地権、差別、紛争の分野における基本的人権はまだなお問題である。
MyitsoneダムやSalween Riverダムといった水力事業、Shwe Gas事業やLetpadaung 銅採鉱といった抽出事業、ダウェイ、チャウピュー、ティラワでの特別経済特区の設立は、全て地域社会と土地を押収した投資家の間に緊張をもたらした。
土地の押収と労働権に対する抗議は国中で増加しており、しばしば脅迫や過度な力の行使が起こり、任意逮捕や拘置が行われている。
最近は、翡翠産業における深刻な人権侵害が報告されている。先週120人以上の死者を出したカチン鉱山での悲惨な地滑りは、規制の未整備と危険な労働環境から生じた結果である。
「ミャンマーの天然資源と労働力には、国内エリートと外国企業にのみ利益がある一方、不利な立場にある地元社会が未整備の規制のもと行われる事業活動の悪影響をこうむり続けるという深刻なリスクを抱えている」とITUC法務部長のJeff Vogt氏は述べた。
「外国人投資家は、自身あるいは投資先が雇用した労働者の権利が確実に保障されるよう人権デューデリジェンスを行う必要がある」。
ミャンマーで外国人投資家は複雑な事業環境にさらされており、責任を負う企業は事業が人権に与える影響を軽減させるためのデューデリジェンスを実施しなければならない。
企業は、事業の悪影響を受けている権利者のための早期救済を図るために、苦情処理のシステムを設立すべきである。国による不十分な救済を考慮すると、苦情処理の運営レベルは特に重要である。
土地を使用または購入する企業は、慣習的地権を認識し、村人や自治体との直接協議によって合意を確実にし、相応の補償を行うべきである。
また外国企業は人権と労働問題の指導者として活動すべきである。これには国際的基準を適用するよう政府に奨励するだけでなく、これらの基準を遵守するよう取引のあるミャンマー企業に約束させることも必要である。
(Myanmar Times 11月30日版 第9面より)